人とともに生きる
ヴァシランドする生き方について、前回は「自分の時間を生きる」ことを考えました。しかし、人はひとりでは生きられません。ヴァシランドしながら人とともに生きる方法について考えてみます。
あなたは、他の人を見るとき、自分と同じと感じますか?それとも、自分は人とは違うと感じますか?
私の場合は、人と自分が同じだと、どこかで感じています。その理由として、2つの違うことに思い当たります。
1つ目は嫉妬です。私は自分より優れている人のことを素直に喜ぶことがなかなかできません。自分の心と向き合ってみると、嫉妬心に気付きます。嫉妬は、無意識に自分とその人と優劣を比べ、自分が劣って感じたときに自己弁護するような気持ちの表れです。自分の弱さを受け入れられず、虚勢を張るような感情です。そして、人と自分を同じだと考えてしまっているところに嫉妬心の根っこがあるように感じます。
一方で、2つ目として「悪法も法なりや」というように、規則やルールに従って人々は平等に暮らすのが良いと思っています。哲学者カントの言う定言命法のような倫理観です。2者がいるときに、その立場が入れ替わったとしても、妥当だと合意できるようなルールを仮定して行動するという考え方です。
「人と同じ」というのは悪いことではありません。しかし、全部同じで単一な人ばかりの社会では、生きていても何も面白くありません。生物界が多様性に富んでいるからいろいろな驚きや発見があるように、人々も多様な方が出会いの喜びが多様になり、結果として喜びの量も増えます。
ヴァシランドとは「どこか行くかよりも、どんな経験をするかということを重視した旅をする」という意味です。多様な経験をするには、前提として人や社会、文化の多様性が維持されていることが大切です。
ヴァシランドする生き方では、前者(心や意識の在り方)では、自己肯定感が重要です。自分の弱さを含め全人格的に肯定的に思うことです。後者(倫理観や社会規範、ルール)では、許容範囲、裁量の設定が重要です。
両者に共通して大切なのは、「絶対正しい」といことを考えない。そして一般論や普遍性に回収できない個別性に配慮するという態度です。それは価値観の多様性を受け入れることです。
樺沢紫苑さんは、「人と比較していたら、絶対に幸せになれない」と著書「極アウトプット」(p65)で述べています。また、小林正観さんは、幸せに暮らすコツとして「き・く・あ」を提唱しています。「きそわず、くらべず、あらそわず」の頭文字です。
こうした態度で生活していると、徐々に「自分は自分のままで大丈夫」という自己肯定感が醸成します。
喜怒哀楽には「怒」「哀」という2つネガティブな感情と「喜」「楽」の2つのポジティブな感情があります。どちらも心の健康を保つには大切な感情です。人生をより良く生きるためのコツがあります。それはポジティブな感情に意識を傾け、記憶に強く定着させることです。樺沢紫苑さんは「3行ポジティブ日記」を毎日つけると良いアドバイスしています。具体的には就寝前15分以内にその日に経験したことのうち、「喜」「楽」に関する出来事を3つ箇条書きする簡単に始められる方法です。
人それぞれが自己肯定感を持って生きる。その肯定感を、他人を否定する源泉とせずに、幸福を実現する原動力として生かす。そして、他者に対する許容範囲を広げ、寛容な態度を養う。そのような「人とともに生きる」を目指したいです。
ヴァシランドする人生は、人への執着がない人生に見えるかもしれません。実際には、「私は私、人は人」という意識と「私はあなた、あなたは私」という意識が共存する生き方です。そしてそのために自分にできることは、自己肯定感を高めることです。次回は、対話について考えます。
0コメント