チャレンジ
「チャレンジ(challenge)」って、「挑戦」のことだけれど、もともとどういう意味なんだろうか。そう思って辞書を引いてみました。ラテン語「calumniari(中傷、悪口)」が語源です(※ジーニアス英和辞典)。「挑戦」以外には「異議」という意味もあります。
「そんなの無理だよ~」という雰囲気に「そんなことない。やってみよ~」という異議を立てることが「挑戦」なのかもしれません。
では、何をすることが「チャレンジ」になるのでしょうか。
「チャレンジ」とは、どんな場合もおそらくそれは未知のことに取り組むことです。この未知の領域のことを「ラーニング・ゾーン(未知なことが多く、いろいろ学びながら進む領域)」と言います。それに対して、慣れ親しんだ快適な領域を「コンフォート・ゾーン」と言います。
これを人の行動で考えてみます。
誰でも子どもの頃は、親と一緒に移動します。ある意味で行動の自由はありません。中学生くらいになると、自分の意思で、自転車などを使って自由に行動し始め、高校生では近隣の都市に電車などで時々出かけるようになります。やがて旅行をするようになり、場合によっては海外旅行をします。
国内旅行と海外旅行の間には少し壁があります。一番大きい壁は言葉でしょう。日本にいれば、コンビニやレストランを使うのは分けないことですが、海外で同じようにできるのかどうか、やってみなけりゃ分かりません。これが「コンフォート・ゾーン」(国内旅行)と「ラーニング・ゾーン」(海外旅行)の違いです。
子どもから大人になる過程にも「コンフォート・ゾーン」と「ラーニング・ゾーン」は存在しています。「公園デビュー」「中一ギャップ」など、人にとってその区切りは違いますが、いろんな場合が想像できると思います。
私たちは「ラーニング・ゾーン」にいるときに成長すると言われます。しかし、「チャレンジ」にはプレッシャーがつきものです。それをうまく回避するヒントとして、樺沢紫苑さんは、他人と比較しないことが大切だと述べています。自分自身と比較して、自分の成長を喜びとしていけば、より幸せに生きられるとアドバイスしています。
私は、チャレンジすることがどちらかというと苦手ですが、ときどきチャレンジもしてきました。私の場合はかなり極端で無謀な感じなので、人にはお勧めしませんが、とにかく行動すること、やってみたいことをやってきました。
例えば、私は中国に滞在して美術作品を作って発表したことがあります。3ヶ月間くらいのことですが、働きながらということはそもそも無理なので、会社を辞めて中国に行きました。週に5日は朝から晩まで作品を作っていました。残りの2日くらいは観光したりくつろいだりしましたが、傍目にはとてもストイック(禁欲的)に見えたらしく、「あなたは仏教の僧侶ですか?」とアメリカから来た若い女性に質問されました。でもやりたいことをやっているのですから苦痛なことは何もありませんでした。
ちょっと無謀なのは、お金のことをあまり考えずに「やってみたいからやる」というところです。中国で滞在したときに会った欧米の芸術家たちも、「お金どうやって稼いでるの?」なんて質問が時々出ていました。確かにお金は大切ですが、お金から自由になることも時として大切なのだと思います。芸術の場合は、そうした無謀さが少しは必要なのかもしれません。
お金と同様に年齢もまた「チャレンジ」を踏みとどまらせる大きな要因になります。私は中国滞在時に40歳の誕生日を迎えました。日本人の感覚では「いい年」です。ですが、そのとき滞在先に来ていた2人のアメリカ人女性が、「誕生日おめでとう、これからの作品がたのしみだねぇ」と言って、北京市内の老舗レストランで誕生日を祝ってくれました。最近、本やネットで知る範囲では、年齢に対する抵抗感は、日本人は少し強く感じ過ぎではないかと思います。
「人は必ず死ぬ」「人生は1回限り」「いつ死ぬのかは分からない」と、ネットで見た動画の中で田坂広志さんが力強くおっしゃいます。誰もが知っていることですが、あらためて向き合うと随分重みを感じます。田坂さんの書籍や動画は中国から帰ってきてから知ったことですが、ときどきこの言葉を思い出します。
日本人はとても堅実な生き方をしているように見えます。若いころから老後を心配して、コツコツと働き続けます。そして、現役を引退すると、今度はさらに高齢になった時のことを心配して、出費を抑えてつましく暮らします。
こうした日本人の姿に対し、ときどき「本当にそうかなぁ。それで嬉しいのかなぁ」と感じます。それは「本当にやりたいことをやっているのだろうか」という問いとも言えます。何も大きな挑戦をしなければいけない訳ではありません。しかし、何もチャレンジしてみない人生はつまらなそうに思えます。
他人と比較しないことを前提とするならば、自由に「こうなりたい自分の姿」や「手に入れたいモノ」を思い浮かべることも可能です。小さな夢でもいいですが、できれば大きな夢を持って生きてみませんか?
【参考図書】
・「極アウトプット」
樺沢紫苑著 小学館 2021/4/6
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